第7回オープン・イノベーションに役立つCVCの活用法
おわりに
以上のように、コーポレート・ベンチャーキャピタルとは何か、その設立形態やメリット、投資後の投資先ベンチャーとの協業、オープン・イノベーションにおける留意点について述べてきた。
2020年4月28日の日経新聞の報道によれば、2020年は前年に対して投資額を減らすとのアンケートに回答した大企業が9割に上っている。
本体勘定からCVC投資をしている企業の場合、新型コロナウイルスの本業への悪影響によって、CVC投資を減額しなければならない事情はわかるが、CVCファンドを組成している場合には、景気後退及び株価下落となっている時期は、安い価格で投資ができるチャンスでもある。ベンチャーキャピタルの投資は、上下の波が必ずくるものであり、それがゆえに、恒常的に、安定して、投資活動を続けていくことが何より必要である。
日本におけるCVC投資によるオープン・イノベーションの活動の推進は、まだまだ道半ばである。新型コロナウイルスの影響は、多少はあるであろうが、今後とも、引き続き、オープン・イノベーションの促進に向けて、CVC投資が活発に行われていくことが期待される。
参考文献
アニス・ウッザマン、経済界、2019年10月号、(2019年)、96-97ページ
KPMG FAS、 実践CVC ~戦略策定から設立・投資評価まで、中央経済社、(2018)、160ページ
冨田賢、新規事業のためのCVC活用の教科書 ~オープン・イノベーションの実践ツール、総合法令出版(2020年)
星野達也、オープン・イノベーションの教科書 ~社外の技術でビジネスを作る実践ステップ、ダイヤモンド社、(2015)、54ページ及び95ページ
米倉誠一郎・清水洋、オープン・イノベーションのマネジメント ~高い経営成果を生む仕組み作り、有斐閣、(2015)、4~6ページ及び89ページ
冨田 賢 (とみた さとし)
Satoshi Tomita, Ph.D.
株式会社TCコンサルティング 代表取締役社長
博士(政策・メディア)