第1回オープン・イノベーションに役立つCVCの活用法
これから、7回にわたって、オープン・イノベーションに役立つCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)の活用法について、解説したい。なお、このコラムは、月刊『研究開発リーダー』2020年8月号に掲載された原稿をもとにしている。
はじめに
本稿では、コーポレート・ベンチャーキャピタルとは何かを解説し、オープン・イノベーションの推進に、どのように活用していくかを紹介する。
まず、通常のベンチャーキャピタルとコーポレート・ベンチャーキャピタルの違いや、CVCファンドの設立形態・設立までのステップについて解説する。
そして、その後、投資先ベンチャー企業との協業のパターンや、CVC投資からのオープン・イノベーション案件の取り扱いの注意点などについて、述べる。
クローズド・イノベーション(自前主義)ではなく、オープン・イノベーション(外部からの新技術を導入して、社内の既存技術と組み合わせるなどして新しい製品開発をする)の促進がテーマである。
本稿の全体として、冨田(2020)を参考にしている。
コーポレート・ベンチャーキャピタルとは何か
通常のベンチャーキャピタルは、資金をファンドの形で複数の投資家から集め、未公開企業(スタートアップ企業と呼ぶことも多く、本稿ではベンチャー企業と同義として扱う)を発掘・投資し、育成して、投資先が株式上場(IPO、Initial Public Offerings)するか第三者に売却(M&A)された際に、売却し、キャピタルゲイン(株価値上がり益)を獲得し、投資家に利益を分配する。つまり、フィナンシャルなリターンを求める金融商品と言える。
一方、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)は、メーカーなどの事業会社が行うベンチャーキャピタル投資のことである。目的は、フィナンシャルなリターンではなく、事業シナジーや新規事業のシーズとなる新技術やビジネスモデル等の獲得といったストラテジックなリターンとなる。ここが大きな違いである。
詳しくは、米倉・清水(2015)に解説を譲るが、オープン・イノベーションには、外部の技術を取り込むパターンと、内部の技術を提供するパターンがあるが、CVCは、前者のパターンとなる。そして、星野(2015)では、エージェント活用探索型及び仲介業者のことが紹介されているが、後述する外部VCと組んだ形のCVCは、外部の新技術等を探索する“エージェント”の役割を果たす。
冨田 賢 (とみた さとし)
Satoshi Tomita, Ph.D.
株式会社TCコンサルティング 代表取締役社長
博士(政策・メディア)